2013年3月25日月曜日

ベースボールサマーキャンプin芦別


2月に受講した講習会の中で今年度開催予定の小学生を対象にしたベースボールサマーキャンプについてお知らせしたいと思います。
講師それぞれ素晴らしい人選かと思いますが、過去実際に話を聞いたことのある水上善雄氏の参加は特に貴重になると思いますよ。
人間形成や野球向上を目指したいなら水上さんの指導をぜひ受けて欲しいと思います。



昨シーズンで引退した元福岡ソフトバンクホークスの小久保裕紀氏の本を読んでいます。走塁のことで触れている中で登場する高橋慶彦氏。当時コーチとして在団された時、高橋コーチのおかげで小久保さんの走塁意識が変わったと書いてあります。プロとして指導は厳しかったようです。

 
 キャンプ開催日は全道少年野球と初日被っていますが、夏休みの思い出にいかかでしょうか?
私も出来ることなら講師の方と話を聞いてみたいです。

2013年3月8日金曜日

"探求〟野球道を考える 第6回(終)

指導者のみなさんへ2メッセージ   桑田真澄氏

野球とは失敗のスポーツである。

人生には代打もリリーフもなし。


 この連載もついに最終回を迎えました。今回は日本の野球界に対する僕の考え方を整理しながら、指導者のみなさんにメッセージを送りたいと思います。

 現役のプロ野球生活を終えて以来、僕の頭の中から離れないのは「日本の野球界に対する強い危機感」です。僕の少年時代、野球が一番の人気スポーツでした。男の子なら誰もが野球に親しんでいたし、多くの子どもが「将来はプロ野球選手になりたい」という夢を抱いていました。

 ところが現在、野球を取り巻く環境は当時とは大きく変化しています。ある調査によると、プロ野球に興味がない人の割合は2003年には25%でしたが、2008年には36%に上昇しています。このデータを世代別にみると、状況はより深刻です。プロ野球に対する無関心層は、60代では15%にすぎないのですが、10代だと50%にものぼるのです。

 アマチュア野球界も将来を楽観視することはできません。戦後順調に増加してきた高校野球の部員数は2009年に約16万9000人を記録して以来、減少傾向に突入しています。今後も少子化が続くことを考えると、わが国の野球の競技人口は長期的に減り続ける恐れがあるのです。

 それでは日本の野球界はどのような変革をおこなうべきなのでしょうか。プロ野球界が球界全体として発展するためには「リーグマネジメント」のあり方を真剣に検討するべきですし、アマチュア野球界はプロ野球選手のノウハウを学生選手へ伝えるために「プロアマ問題」の解決を図る必要があるでしょう。しかし僕自身は、あらゆる変革の出発点になるのは全ての野球選手の原点であるsマチュア野球をより良くすること、とくに「指導者の意識改革」であると確信しています。

 現役時代から少年野球の指導に携わっていて痛感するのは、わが国のアマチュア野球界では、「勝利至上主義」の指導者があまりに多いという現状です。その結果、若い選手に対して一方的な指示、命令をすることが半ば習慣化されていることです。経験論に依存した指導方法や失敗した選手への体罰、相手チームや審判へのヤジ、さらには未成年の選手の前での喫煙や飲酒も当たり前のようにおこなわれています。

 子どもたちはこうした指導方法や振る舞いをどのように評価しているのでしょうか。大学院生の時に現役プロ野球選手300名を対象としたアンケート調査を実施したところ、中学時代に「自分が指導者になった時に同じ内容の指導をしたい」と答えた選手は約15%にすぎませんでした。

 多くの指導者がプライベートの時間を削って、若い選手のために心血を注いでいることは僕も知っています。しかしながら若いアマチュア球界の選手たちはこうした大人を冷ややかに見ているのです。厳しい言葉になりますが、アマチュア野球界の指導者にとっては「子どもたちのため」にしているはずのコーチングがいつの間にか大人主体の指導になっている現実を直視すべき時期にきていると思います。

 実は、先ほど指摘した日本のアマチュア野球界の指導方法は野球が日本に伝来した当時から存在したわけではありません。明治初頭、アメリカ人教師が日本人学生に野球を教えた時、野球の目的あくまでも休み時間を利用した「遊び」と日本人学生の健康増進にすぎませんでした。

 ところが、その後旧制一高が「インブリー事件」をきっかけに猛練習を行ったこと、戦前に元早大野球部監督の飛田穂洲先生が軍部や政府から野球を守るために「野球は強い軍人を養成するのに有用である」と主張したこと、戦後復員した軍人が日本全国で先輩選手、指導者、審判の役割を担ったことなどの歴史的背景が重なった結果、日本のアマチュア野球界では「誤解され野球道」の精神が指導哲学として定着したのです。

 残念ながら、現在日本のアマチュア野球界で浸透している「誤解された野球道」は競技力の高い選手を育てるために確立された指導哲学ではありません。また現代のアマチュア野球選手が社会で有用な人材になるためのアプローチとも思えません。現在では野球と野球選手を取り巻く環境が様変わりしているからです。したがって野球を今後もわが国で発展させるためには、現在の環境に合わせて指導理念を再構築しなければなりません。

 スポーツ医科学が世界的に発展している現状では、「量」よりも「質を重視する練習方法」を普及させる必要があります。一つのことに集中することが必要な時期もありますが、引退した後も充実した人生を送るためには野球と勉強、主体性とチームワークなど一見相反する様々な要素の「バランス」を取ることが大切です。そして指導者や先輩選手の命令に絶対服従するのではなく、どんな時も自分と他人を「リスペクト」できる選手の育成も不可欠です。これら3つのポイントの象徴「スポーツマンシップ」という価値観であり、今後のアマチュア野球界が「人材育成主義」を目指し、共有すべき指導理念であると考えます。

 「スポーツマンシップ」の真髄を理解していただく上で、僕がみなさんに二つメッセージを伝えたいと思います。

 第一に「野球とは失敗のスポーツである」という教訓です。どんなに素晴らしい選手でも3割しかヒットを打つことはできませんし、どんなに優れた投手でも毎試合勝つことはできません。逆に毎日打席に立つ主力選手ほど三振数は増えますし、ローテーション投手になると敗戦数も増えるのです。したがって野球選手にとって大事なのは、失敗しないことではありません。

 失敗を防ぐために準備をしたり、たとえ失敗しても何度でも起きあがる姿勢を身につけてこそ成長を続けることができるのです。

 第二のメッセージは「人生に代打とリリーフはいない」という真実です。野球では、チャンスやピンチになれば、監督が試合中に選手を交代させることができますが、人生ではそうはいきません。逃げ出したくなるようなピンチに陥っても、自分を信じて挑戦するしかないのです。若い選手たちの人生も指導者がいつまでも指示や命令を下せるわけではありません。ですから指導者のみなさんには、主体性や責任感をもって苦しい状況でも果敢にチャレンジできる人材を育てていただきたいと思います。

 連載は今回で終了しますが、これからも野球を愛するみなさんとともに学びあいながら野球界をよりよい世界にしていきたいと思っています。ありがとうございました。